世界の高等教育では、1990年代以降、Students as Partners(学習者をパートナーとして位置づける)という考え方が質保証や大学ガバナンスの重要な柱として広がってきた。英国や欧州諸国、オーストラリア、香港などの大学では、教育改善や内部質保証だけでなく、大学運営や意思決定の場に学生が制度的に参画する仕組みが一般化している。
一方、日本では、1960年代の学生運動の経験が制度化へと結びつかなかった歴史的経緯もあり、学生参画は長らく限定的であった。学部・研究科レベルでの授業改善やアンケートの収集は行われてきたものの、大学運営の意思決定に学生が関わる仕組みは十分に構築されてこなかった。「学生の声」は可視化されても、「学生の役割」は位置づけられてこなかったと言える。
しかし近年、日本でも状況は確実に変化している。認証評価が「学生の視点」の重要性を強調し、学習者中心の教育への転換が大学全体に求められる中で、学生の声を運営や教育改善どう組み込むかが避けて通れない課題になりつつある。国立大学でも、東北大学の「学生評議員制度」、愛媛大学の「学生代表者会議」など、大学の執行部が学生の声を聴く取り組みが広がっている。私立大学でも、APUの「学生特命副学長制度」、上智の「学生職員」、慶應義塾の「SDGs学生会議」、共愛学園前橋国際大学の「学生アドバイザリー委員会」など、規模や設置主体を超えて新しい動きが生まれている。
これらの芽は、政策による直接の誘導ではなく、現場の問題意識から生まれている点に特徴がある。人口減少、学生の多様化、大学への説明責任の高まり、教育の質向上への社会的要求などの圧力が強まるなかで、大学は組織として 「学生をどのように位置づけるのか」 を明確にする必要に迫られている。学生参画は単なる参加機会の拡大ではなく、大学のガバナンス、教育改善、内部質保証、組織文化のあり方に不可避の影響を及ぼすテーマとなっている。
同時に、学生参画を導入する際には、いくつもの論点が浮かび上がる。
学生の代表性はどう確保するのか。
大学運営の専門性とどう接続するのか。
どのような情報を開示していくのか。
一部の声だけが過大に反映されることをどう防ぐのか。
フォーラムでは、両角から趣旨説明(背景説明と論点提示)をしたうえで、続いて、異なる取り組みの事例を紹介し、なぜその仕組みを導入したのか、どのように運用しているのか、そこから何が見えてきたのかを共有いただく。最後のパネルディスカッションでは、学生参画を大学の未来像の中でどう位置づけるか、学生参画は大学にどのような変化をもたらしうるかを、参加者とともに考えたい。
1.日 時:2026年3月6日(金) 14:00~17:00
2.開催形式:Zoomオンラインセミナー
3.参加費:無料
4.定員:300人(定員になり次第受付終了)
5.話題提供
全体司会:小林雅之(桜美林大学 教授)
趣旨説明:背景と論点の提示 両角亜希子(東京大学 教授)
話題提供:
「愛媛大学の学生代表者会議」八尋 秀典(愛媛大学 理事・副学長)
「APUの学生特命副学長制度」 米山 裕(立命館アジア太平洋大学 学長)
「共愛学園前橋国際大学 学生アドバイザリー委員会」 大森 昭生(共愛学園前橋国際大学 学長)
「学生参画に関する理論的考察 ―イギリスの事例から」 田中 正弘(筑波大学 准教授)
6.パネルディスカッション
パネリスト:八尋 秀典/米山 裕/大森 昭生/田中 正弘
司会:濱中 義隆(国立教育政策研究所 高等教育研究部長)
7.申し込み方法:下記URLまたはQRコードの参加受付フォームよりお申込みください
https://forms.gle/gWeMCrtv21VFrdWv6
